盛岡地方裁判所 昭和62年(ワ)364号 判決 1996年12月27日
原告
梅津合資会社
右代表者無限責任社員
梅津紳一郎
原告
兼亡梅津勝弘訴訟承継人
梅津紳一郎
同
亡梅津勝弘訴訟承継人
梅津隆子
同
渡邉五男
右原告ら四名訴訟代理人弁護士
富澤準二郎
高田治
右訴訟復代理人弁護士
石井和男
被告
釜石市
右代表者市長
野田武義
被告
濱川才治郎
同
佐久山謙吉
右被告ら三名訴訟代理人弁護士
藤原博
新津勇七
松浦勇
松田武
主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
被告らは、連帯して原告梅津合資会社(以下「原告会社」という)に対し金五億一〇七六万五三八六円、原告梅津紳一郎(以下「原告紳一郎」という)に対し金一億四八二五万七八〇八円、原告梅津隆子(以下「原告隆子」という)に対し金六二一一万一一四七円、原告渡邉五男(以下「原告渡邉」という)に対し金一五三四万〇四六〇円及び右各金員に対する平成六年一二月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、一旦火災が鎮圧された後再燃した山林火災によって立木の焼損等の損害を受けた者が、右再燃火災は右火災当時被告市の市長等の地位にあって消火活動等の最高指揮者等としての権限を有していた者並びに消防署職員及び消防団員(以下、合わせて「消防職団員」という)が、その公権力の行使として消火活動等をするに当たり故意若しくは重大な過失があったことによるとして、地方公共団体である当該市及び当時の市長等個人に対し、国家賠償法等によって損害の賠償を求めた事案である。
一 争いのない基本的な前提事実
1 当事者等
(一) 原告会社は、林業等の経営を目的とする会社であり、訴訟承継前の原告である亡梅津勝弘(以下「亡勝弘」という)は原告会社の無限責任社員兼代表社員で、自身も林業の経営を行っていた者、原告紳一郎は亡勝弘の子で原告会社の有限責任社員であったが、平成五年一〇月二五日亡勝弘死亡後原告会社の無限責任社員となり、自身も林業等の経営を行っている者で、かつ亡勝弘の死亡によりその権利義務を相続した者、原告隆子は亡勝弘の妻で同人の権利義務を相続した者、原告渡邉は原告会社に勤務し、原告会社、亡勝弘及び原告紳一郎各所有の山林の管理を行っていた者である。
なお原告会社、亡勝弘及び原告紳一郎は、別表「山林土地の焼損一覧表」記載のとおりそれぞれ山林を所有していた。
(二) 被告釜石市(以下「被告市」という)は地方公共団体で、被告濱川才治郎(以下「被告濱川」という)は昭和五〇年五月一八日から同六二年五月一七日まで被告市の市長の職にあった者、被告佐久山謙吉(以下「被告佐久山」という)は後記火災当時被告市の助役で市長の職務を補佐するとともに消防長等の職を兼務していた者である。
2 本件火災の発生と再燃
(一) 昭和六二年四月二二日午後三時頃、被告市所有の釜石市東前町庄治ヶ沢付近山林の別紙図面A地点から出火し、山裾から稜線に向け燃え広がった(以下「本件一次火災」という)。
(二) 右火災は、同日午後三時一一分に覚知され、被告市は、右火災発生に対処し、同日午後三時二〇分災害警戒本部(本部長被告市総務部長)を設置し、同三時三〇分これを被告濱川を本部長、被告佐久山を副本部長とする災害対策本部に切替え、岩手県(以下「県」という)を通じて自衛隊に救援派遣を要請するとともに、被告市所属の消防職団員約八〇〇名を動員して消火作業に当たった。
(三) 被告市は、右消火作業の結果翌二三日午後四時一五分頃右火災を鎮圧し、それに伴って自衛隊の撤収要請を県に依頼し、同日午後五時五〇分には未だ後記消防庁長官通知の鎮火と認められる状態には至っていなかったものの、鎮火を宣言してその旨放送し、翌二四日午前九時一五分災害対策本部を廃止した。
(四) ところが、その直後の同日午前一〇時頃に鏡地区の別紙図面B地点より残火の再燃による火災が再発し(以下「本件二次火災」という。なお、本件一次、二次火災全体を「本件火災」という)、その後間もなく右火災が覚知されて同一〇時五五分に災害警戒本部が設置され、次いで同一一時三〇分災害対策本部が設置されて再度自衛隊の救援を受け消火作業がなされたが、本件二次火災は、同日午前一〇時頃から吹き出した強風に煽れて、山頂から東方向の海岸線に向け燃え広がって翌二五日午後五時に鎮圧されるまで燃え続け、原告ら所有の前記山林等が被害を受けた。
(五) なお火勢鎮圧時刻と鎮火時刻は、いずれも消防庁への報告事項となっているところ、火災報告取扱要領(昭和四三年一一月一一日消防総第三九三号消防庁長官通知)によると、火勢鎮圧時刻とは火勢が消防隊の制御下に入り、拡大の危険がなくなったと現場の最高指揮者が認定した時刻をいい、鎮火時刻とは現場の最高指揮者が再燃のおそれがないと認定した時刻をいうものとされている。
二 争点
1 被告濱川及び被告佐久山個人の損害賠償責任の有無
(一) 原告らの主張
被告濱川及び被告佐久山は、本件火災の際、市長あるいは助役兼消防長として被告市災害対策本部長等を務めるなどし、それぞれ消防職団員等を指導、命令、監督したもので、その職務を遂行するに当たって後記のとおり故意若しくは重大な過失があったから、次の理由により、被告市と別個に民法七〇九条による損害賠償責任を負う(両者の関係は不真正連帯債務)ものと解すべきである。すなわち、民法上、使用者が使用者責任を負う(同法七一五条)場合でも、その行為者の責任は免除されないことと対比し、公務員の場合だけ責任がないとする合理的理由がなく、免責を認めると公務員の責任意識をなくし職権の濫用を招くおそれがあるし、また公務員個人の責任を認めないと、経済的充足だけでは満たされない被害者の権利感情を著しく阻害することになるからである。
特に本件の場合、被告濱川は、同様に市長として在任中の昭和五一年一月二日に山林火災が発生した際、同月五日に鎮火宣言して災害対策本部を解散し、同月六日に消防団のほぼ全員を集めて出初め式を行うなど火災再発の警戒を怠ったことにより、残火の再燃による大規模な山林火災が再発するという大失態を経験しており、また、山林火災の場合、通常鎮圧から約二週間は残火処理に当たり、残火より再発するおそれがないことを確認した上でなければ鎮火宣言などなすことはできないにもかかわらず、本件火災当時はたまたまその直前の四月一九日に告示された被告市の市長選挙の真っ最中で自らも立候補していたため、当選したい一心で早々に選挙運動をなすことを欲し、鎮圧と同時に鎮火宣言をして非常時体制を解いたものである。しかも四月、五月は気象的に山火事前線の到来といわれているほど山火事が頻発するおそれのある時期であって、被告濱川もそのことを当然知っていながら、右鎮火宣言後、同被告の自宅のある住居地域の延焼防止にのみ関心を示して、山林については消防職団員に何らの警戒体制もとらせなかったものである。
被告佐久山は、市長であった被告濱川を補佐すべき助役であったものであり、かつまた災害防止の責任者というべき被告市の消防長であったから、被告濱川と同等の責任を負うべきである。
本件では、右のような事情があって故意若しくは重大な過失が認められる事案であるから、被告濱川及び被告佐久山も損害賠償の責任を負うものというべきである。
(二) 被告濱川及び被告佐久山の主張
原告らが右被告らも公務員個人として損害賠償責任を負うべき理由として主張するところはいずれも根拠薄弱であり、故意若しくは重大な過失の有無にかかわらず、右被告らに損害賠償責任はないものと解すべきである。そもそも右被告らに対する本件訴は不適法と解すべきである。
2 被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員の故意若しくは重大な過失の有無
(一) 原告らの主張
防災は、地方公共団体の重要な任務の一つである(地方自治法二条三項八号)ところ、被告市の消防職団員、特に本件火災当時被告市の市長で災害対策本部長を務めた被告濱川と助役兼消防長で右災害対策副本部長を務めた被告佐久山は、山林火災について知ることが少なく、また知る意欲もなかったことから、山林火災に対する予防、消火、再燃防止等に対する対策を怠り、山林火災の実態を軽視したことが、本件二次火災を引き起こした原因である。
すなわち、山林火災の場合、強風ないし突風が吹けば容易に発煙、発火し再燃の原因となる地中火(山林火災によって、土地そのものが火災の熱気を受け、地中の有機層や樹木の地中の根幹部分が燃焼する現象)といわれている残火が存し、例え火災(地表火)が鎮圧されたとしても、なお再燃の危険が存するので、発煙発火しない限りその発見が容易でない右地中火を消滅させるために長期にわたり(通常鎮火までに約二週間程度を要するといわれる)継続して消火作業を行う必要があり、また、その間相当数の消防職団員を動員し、ジェットシューター、動力噴霧器、無線機等など近代的消火器具を完備した消火体制を敷くなど警戒体制を継続する必要があった。特に本件火災当時は、前記のとおり気象的に山火事前線の到来といわれているほど山火事が頻発するおそれのある時期で、数日前から異常乾燥注意報発令中であり、突風が吹きやすい時期であったからなおさらのことである。
しかるに、被告濱川及び被告佐久山の両名は、前記のとおり昭和六二年四月二三日午後四時一五分頃、本件一次火災鎮圧後未だ鎮火状態に至っていないにもかかわらず、同日午後五時五〇分に鎮火を宣言してその旨放送し、翌二四日午前九時一五分災害対策本部を廃止するとともに消防職団員を解散させ、住宅地区においてホースを設置したままにした以外は警戒体制をも解除した。そのため右鎮火宣言以降の残火(特に地中火)に対する消火活動(以下、残火に対する消火活動を「残火処理」ともいう)をなすべきもっとも大切な時期を無為に過ごす結果となり、同日午前九時三〇分頃、本件二次火災発生地点の一つである別紙図面のB地点が先ず再燃し、これを市職員四名において発見しながら空バケツしか持っていなかったため早期に消火できず、その後の強風に対応できなかったことから、右再燃が拡大して本件二次火災が発生し、被害を増大させるに至った。被告濱川及び被告佐久山の両名は、同日午前一一時から一二時にかけて消防職団員を右再燃地区に出動させたが遅きに失っしたものである。山林火災の際の残火処理の不適切による再燃の火災事例は幾多あり、特に被告濱川においては、前記のとおり被告市の市長として在任中の昭和五一年に同市内における山林の再燃火災を経験しているにもかかわらず、その過失を省みずに同一の誤りを繰返したものであって、本件火災当時、たまたま前記のとおり被告市の市長選挙の真っ最中であり、右選挙に立候補していた被告濱川においては、これに当選したいとの政治的判断から、早めに鎮火の判断をし鎮火宣言をして消火活動を打ち切ったものとしか考えられない。
一方被告市の消防職団員も又前記鎮火宣言後前記のとおり継続してなすべき残火処理及び警戒体制の維持を怠ったものである。
なお鎮火宣言直後から四月二三日の夜間を通じて残火処理することが困難であったとしても、翌二四日の日出時刻(午前四時四六分頃)から消防職団員を動員して完全装備のうえ残火処理に当たれば、強風が出る前に十分に対処することが可能であって、本件二次火災を防止できたものである。
以上のとおりであるから、被告濱川及び被告佐久山両名の前記鎮火宣言ないし警戒体制の解除はその故意に基づくものということができ、仮にしからずとしても、右被告両名及び被告市消防職団員に重大な過失があったものというべきである。
(二)被告らの主張
被告濱川、被告佐久山及び被告市の消防職団員は、地方自治法の本旨に基づき一団となって防災の職務を履行しており、防災知識、経験、装備等も類似する他市に比して遜色はなく、本件火災に際しても、防災の専門知識、経験を生かし、被告市の防災組織、体制の総力をもって鎮圧、鎮火のため最善を尽くして消火活動を行い、かつ再燃火災の予防警戒を実施した。したがって、右被告らに何らの過失はなく、もとより故意、重過失もない。すなわち、被告市の消防職団員は、四月二三日の鎮火宣言後においても、同日午後八時頃まで残火処理に当たり、その後も残火による再燃火災を警戒してそれぞれの部署において待機した上、消防署職員の一部による巡視を実施して警戒体制を継続し、発煙、発火が発見されれば直ちに消火活動ができる状態にあった。現に四月二四日午前六時五〇分頃尾崎アスレチック公園付近から発煙が認められた際も直ちに現場に急行し消火している。また本件二次火災発生の際も、被告市有林の監視人が鏡地区の別紙B地点に発煙を認め、通りがかりの被告市市民生活課職員五名のうち一名がその通報に向かい、残る右監視人を含めた五名でその発煙現場に向かってこれを消火し、一方発煙の右通報により消防署の消防車と消防団の第六分団の消防車が鏡地区に急行し、別紙図面C地点に発煙を認めてこれを消火している。
本件二次火災は、右消火後間もなく山裾(北)から峯(南)方向に吹いていた風が急に風向きを変え、それまでとは反対に峯から山裾方向に突風が吹き、峯付近が再燃して燃え上がり、その火の粉が突風と共に山裾に向かい、延焼して一面火の海と化したことから、消防職団員の身が危険となり退却を命じざるを得なくなったため、その発生を防止できなかったものであり、不可抗力というべきである。
なお四月二三日の前記鎮火放送は、災害対策本部において、現地指揮本部からの本件一次火災が鎮圧状態になった旨の報告と、風速、風力が安定している等の気象観測結果、それに大火災で動揺している民心の安定の要請等の諸事情を踏まえて、緊急時における総合的判断に基づき行ったものであって、やむを得ない処置であったというべきである。
また、山林火災において、火災鎮圧後、その残火処理に相当長期間要することは原告ら主張のとおりであるところ、本件一次火災により一三六ヘクタールという広範囲の山林が焼失したものであり、その全域において短時間に地表に見えない地中火をジェットシェーターにより完全に消火することは現実には不可能なことであるし、また四月二三日午後八時以降の真夜中、急峻な山地において不眠不休の身体でさらに残火処理を継続することは生命の危険があったというべきであるから、原告らの主張は不能を強いるものに他ならない。
3 被告濱川等の故意若しくは重大な過失と本件二次火災との因果関係の存否
(一) 原告らの主張
前記主張のとおり遅くとも四月二四日の日出時刻から消防職団員を動員して完全装備のうえ残火処理に当たれば、強風が出る前に十分対処することが可能であって、本件二次火災を防止できたのであるから、被告濱川等の故意若しくは重大な過失と本件二次火災の発生及びこれによる原告らの受けた損害との間に相当因果関係がある。
(二) 被告らの主張
前記主張のとおり、本件二次火災は、突風によって残火の再燃が各所で発生し、それが拡大して手が付けられない状態となって発生したものであるところ、山林火災においては残火処理に相当長期間要し、前記のとおり広範囲な本件一次火災の全域において本件二次火災発生までの間に完全に残火処理を行うことは現実には不可能であったから、仮に被告濱川等に故意ないし重大な過失があったとしても、それと本件二次火災の発生及びこれによる原告らの受けた損害との間に相当因果関はない。
4 損害の存否及び損害額
原告らの主張
(一) 原告会社の損害
合計五億一〇七六万五三八六円
(1) 火災による原告会社所有山林の市場価格の低減
八一〇四万九二〇〇円
山林は、火災によって表土上の落葉等の蓄積に基づく有機物の焼失により栄養物が失われたり、土壌の理化学的性質が立木の育成に適する酸性からアルカリ性に変化して植物の成長が阻害されることなどにより苗木や立木の成長が著しく不良となるので、山林としての価値が著しく低減するところ、原告会社は、別表「山林土地の焼損一覧表」記載のように、その所有山林が本件二次火災に罹災したことにより、その市場価格が著しく低減し、同表「二次焼失損害金」欄記載の損害を受けた。
(2) 造林、保育等の費用
四九五三万八一七四円
原告会社、亡勝弘及び原告紳一郎は、その各所有山林が本件二次火災に罹災したため、それらを植林用の山として回復させるために必要な造林保育等の作業を短期間で行わざるを得ず、その費用は右火災により受けた原告らの損害というべきところ、右費用として右三者合計一億三一八八万六三八九円を費したが、それに対し岩手県から五四二一万五九九九円の補助金が原告らに支払われたので、原告らの実損は全部で七七六七万〇三九〇円となる。本件二次火災による原告会社所有山林の焼失面積は別表「山林土地の焼損一覧表」記載のとおりで、原告ら三者の合計山林焼失面積の63.78パーセントであるから、右焼失面積の割合により原告会社の実損を計算すると、四九五三万八一七四円となる。
(3) 間伐による得べかりし利益の喪失 二億七二三〇万七六五九円
原告会社の前記所有山林上の立木が本件二次火災に罹災しなければそのまま継続して立木の育成がなされ、それに伴い七年毎に間伐が行われて利益を上げることができたが、右火災によりそれができなくなって、原告会社は、伐採作業等の諸経費を控除しても、二億七二三〇万七六五九円の得べかりし利益を失った。その計算関係は、別紙「第二次火災罹災山林育成予想利益」記載のとおりである。
(4) 建物等の焼失
合計一四〇〇万五三二三円
原告会社は、本件二次火災によりその所有する以下に掲記の物件を焼失し、損害を受けた。
①山荘一棟 二一七万五八〇〇円
時価一二一七万五八〇〇円から原告会社が受領した火災保険金一〇〇〇万円を控除した残額。
②ロッジ一棟 二一九万七五五〇円
時価九一九万七五五〇円から原告会社が受領した火災保険金七〇〇万円を控除した残額。
③倉庫三棟 合計四八万円
④別表「原告会社罹災物品一覧表」記載の家財什器工具等
合計八九六万〇五〇〇円
⑤別表「原告会社木材一覧表」記載の在庫材木
合計一九万一四七三円
(5) 保険料合計八〇〇万八六七四円
①原告会社は、本件二次火災により前記所有山林上の立木について焼損による損害を受けたが、保険金の受領により被告らに対しその損害賠償を請求しておらず、原告会社が訴外全国森林組合に対し支払った保険料は原告会社の損害ということができるので、その保険料六九六万九五五四円。
②前項①②のとおり実際の損害額から保険金を控除しており、原告会社が支払ったその保険料は原告会社の損害ということができるので、その保険料山荘について五六万三二〇〇円、ロッジについて三四万四九六〇円。
③原告会社は、本件二次火災によりその所有のプレハブ二棟を焼失し損害を受けたが、保険金の受領により被告らに対しその損害賠償を請求しておらず、原告会社が支払った保険料は原告会社の損害ということができるので、その保険料一三万〇九六〇円。
(6) 消火作業及び残火処理費用
合計一八六万一〇〇〇円
本件火災の際、消火作業等に当たった原告会社社員や訴外花巻市森林組合員等に対し支払った消防作業賃金一〇五万円、その謝礼金二七万五〇〇〇円、消防団への謝礼金(酒代)三万六〇〇〇円、移動費、食費、雑費等五〇万円。
(7) 本件二次火災に罹災した原告渡邉のため支出した費用
合計九八万二〇〇〇円
原告渡邉ら家族が居住していた山荘等の焼失のため八ケ月間仮住まいを余儀なくされたが、その際の仮住まい先の家賃八ケ月分二一万二〇〇〇円(一ケ月二万六五〇〇円の割合)、同原告に支給した食費等増給臨時手当三二万円(家族一人一万円宛四人分で八ケ月分)、後片付臨時手当四五万円。
(8) 出張費等の雑費
合計六二万〇九七六円
原告会社は、本件火災の事後処理のため職員等を県や林野庁、税務官庁等に出張させて必要な諸手続をしたが、その旅費として四〇万一六八六円、写真代七万二五九〇円、ビデオ四万七〇〇〇円、そのほか雑費九万九七〇〇円要した。
(9) 慰藉料 五〇〇〇万円
原告会社の所有する山林内には、県から上閉伊一号と命名された樹齢七〇年生の杉木を中心とする優良な杉美林があって、約二〇〇〇本の優良木が存し、その中に樹高三五メートルを越えるものも四〇〇本を超え、見学調査に訪れる者もしばしばであったが、本件二次火災により見学者等を招致できなくなったばかりか、計画的な伐採植林が不可能になって、山林経営に壊滅的な打撃を受けた。これによって、当時原告会社の無限責任社員であった亡勝弘の受けた精神的苦痛は想像を絶するものがあったが、合資会社で個人的色彩の強い原告会社においては無限責任社員の精神的苦痛は原告会社の苦痛ということができる。そして、右慰藉料は五〇〇〇万円が相当である。
(10) 弁護士料三二三九万二三八〇円
(二) 亡勝弘の損害
合計一億一一八九万一〇一四円
(1) 火災による亡勝弘所有山林の市場価格の低減
三八五九万五二八〇円
亡勝弘も、原告会社の損害(1)に記載したところと同じくその所有山林について別表「山林土地の焼損一覧表」の「二次焼失損害金」欄記載の損害を受けた。
(2) 造林、保育等の費用
二二五九万四三一六円
原告会社の損害(2)記載の損害で、亡勝弘所有山林の焼失面積は別表「山林土地の焼損一覧表」記載のとおり原告ら三者の合計山林焼失面積の29.09パーセントであるから、右焼失面積の割合により亡勝弘の実損を計算すると、二二五九万四三一六円となる。
(3) 間伐による得べかりし利益の喪失 四九〇九万二一六〇円
原告会社の損害(3)に記載したところと同じく亡勝弘所有山林上の立木についても、別表「第二次火災罹災山林育成予想利益」記載のとおり四九〇九万二一六〇円の得べかりし利益を失った。
(4) 保険料 一六〇万九二五八円
亡勝弘も、本件二次火災により右所有山林上の立木について焼損による損害を受けたが、保険金の受領により被告らに対しその損害賠償を請求しておらず、亡勝弘が原告紳一郎と共同で訴外全国森林組合に対し支払った保険料は同人らの損害ということができるので、その保険料一六〇万九二五八円(原告紳一郎と折半した保険料の額)。
(5) 相続
原告隆子及び原告紳一郎は、亡勝弘が平成五年一〇月二五日死亡したので、相続により法定相続分各二分の一の割合で亡勝弘の被告らに対する損害賠償請求権を取得した。右原告らが取得した右損害賠償請求額は計算上各五五九四万五五〇七円である。
(三) 原告紳一郎の損害
合計九二三一万二三〇一円
(1) 火災による原告紳一郎所有山林の市場価格の低減
一一五三万九二〇〇円
原告紳一郎も、原告会社の損害(1)に記載したところと同じくその所有山林について別表「山林土地の焼損一覧表」の「二次焼失損害金」欄記載の損害を受けた。
(2) 造林、保育等の費用
五五二万二三六四円
原告会社の損害(2)記載の損害で、原告紳一郎所有山林の焼失面積は別表「山林土地の焼損一覧表」記載のとおり原告ら三者の合計山林焼失面積の7.13パーセントであるから、右焼失面積の割合により紳一郎の実損を計算すると、五五二万二三六四円となる。
(3) 間伐による得べかりし利益の喪失 六一七六万八三九七円
原告会社の損害(3)に記載したところと同じく原告紳一郎所有山林上の立木についても、別紙「第二次火災罹災山林育成予想利益」記載のとおり六一七六万八三九七円の得べかりし利益を失った。
(4) 保険料 一六〇万九二五八円
亡勝弘の損害(4)記載のとおり同人と折半した保険料である。
(5) 弁護士料一一八七万三〇八二円
右(1)ないし(4)の損害と亡勝弘から相続した損害賠償請求分についての弁護士料 五九三万六五四一円
(四) 原告渡邉の損害
合計一五三四万〇四六〇円
(1) 家財什器工具等の焼失
五三一万八六〇〇円
原告渡邉は、本件二次火災によりその所有の別表「原告渡邉罹災部品一覧表」記載の物件を焼失し、損害を受けた。
(2) 慰藉料 八〇〇万円
原告渡邉一家は、原告会社の損害(4)記載のロッジを管理人社宅として居住し平穏に生活していたが、本件二次火災の急撃を受け、家族揃って着の身着のまま、命からがら右火災を逃れ、その後八ケ月仮住まいを余儀なくされた。その精神的苦痛は計り難く、慰藉料として八〇〇万円が相当である。
(3) 弁護士料 二〇二万一八六〇円
(五) 原告らの損害賠償請求額
(1) 原告会社
前記損害額五億一〇七六万五三八六円
(2) 原告紳一郎
前記損害額と亡勝弘から相続した前記損害賠償請求権の額を併せて一億四八二五万七八〇八円
(3) 原告隆子
亡勝弘から相続した前記損害賠償請求権の額五五九四万五五〇七円と弁護士料六一六万五六四〇円の合計六二一一万一一四七円
(4) 原告渡邉
前記損害額一五三四万〇四六〇円
第三 争点についての判断
一 被告濱川及び被告佐久山の損害賠償責任(争点1)について
原告らは、被告濱川及び被告佐久山個人も民法七〇九条に基づいて損害賠償責任を負うべきであると主張するけれども、原告らにおいて故意もしくは重大な過失ある行為と主張する右被告らの行為は、いずれも国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使に当たる公務員」の職務行為に該当すると解されるところ、国家賠償法一条の法意に照らすと、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うにつき故意過失ある行為によって他人に損害を与えた場合は、専ら国又は公共団体がその賠償責任に任じ、行為者である当該公務員個人は他人に対し直接に民法七〇九条による賠償責任を負わないものと解するのが相当である。原告らは、かかる場合に公務員個人も損害賠償責任を負うべきであると主張し、その理由をあれこれ主張するけれども、いずれも十分な論拠とはなり得るものではなく、採用できない。
そうすると、原告らの右被告らに対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないといわねばならない。
なお被告濱川及び被告佐久山において、同被告らに対する原告らの本件訴は不適法と主張する部分があり、それは右被告らが被告としての当事者適格を欠くという趣旨の主張と解されるが、本件の如き給付訴訟においては、特に法律で被告となりうる者を限定していない限り、原告によってその給付義務ありと主張される者が被告としての当事者適格を有するものと解すべきであるから、右主張も採用できない。
二 被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員の故意若しくは重大な過失の有無(争点2)について
1 本件火災の経過と被告市消防職団員等の消火活動等
本件一次及び二次火災の経過と消火活動の概要は、前記事案の概要2(一)ないし(四)記載のとおりであるが、証拠(甲九の1ないし11、一〇、一三、一四の1、2、一七、一八、三一の1ないし4、四三の1ないし3、四四、乙一二、一三の1、2、一四、証人宮原正利、同阿部清美、同古川鶴松、同佐藤健次郎、同臼沢良一、弁論の全趣旨)によれば、さらに次のとおり認められる。
(一) 本件火災現場に近い被告市消防署小佐野出張所における観測結果(以下、特に指摘しない限り風速等はこの観測結果による。但し、本件火災現場の気象とは必ずしも一致しない)によれば、本件一次火災が発生した昭和六二年四月二二日午後三時頃の平均風速は9.8メートル、最大風速は22.5メートルであり、火勢は、この強風に煽られてまたたくまに拡大し、一方は山裾の新浜町の住宅近くに迫り、他方は斜面の樹木等を焼き払って稜線に達し、さらに風下の岬方面に延焼する状況となったため、同日午後三時五〇分被告市災害警戒本部は全消防団に出動(第三出動)を命令し、同四時二〇分には県を通じ自衛隊に災害派遣を、同二七分には大槌町消防本部に応援出動を、それぞれ要請して、被告市消防職団員は右応援部隊と共に、主として住宅地への延焼防止に重点を置いて、消火作業を行った。
(二) その結果、同日夜九時頃から急速に風が弱まったこともあり、住宅地への延焼のおそれがなくなったことから、山林の消火作業に重点を置くこととなり、被告市消防職団員は、翌二三日未明頃から自衛隊や応援消防隊と連携してタンク車等で消火用水をピストン輸送し、消火中継支援体制を整備し、一斉に高圧ポンプやジェットシューター等により注水消火を行うとともに、同日午前四時二〇分頃からは自衛隊のヘリコプターによる空中消火作業も開始された。右空中消火作業は、同日午前九時四五分頃一旦終了したが、再燃箇所が発見されるなどしてその後も断続的に午後三時二五分頃まで行われた。
右のような消火活動により、同日午後四時一五分頃には本件一次火災は鎮圧されたものと認められる状態となるに至ったが、被告市災害対策本部は、前記事案の概要2(三)記載のとおり未だ鎮火と認められる状態には至っていなかったにもかかわらず、同日午後五時五〇分鎮火宣言をし、その旨放送した。
(三)もっとも、被告市消防職団員の残火処理等の消火活動は、右鎮火放送に関係なく継続され、発煙が目視されない状態となった同日午後八時頃まで行われた。その後消防職員は、非番の者を除いて再燃が発見されれば直ちに消火活動が出来る警戒体制をとったまま各所属の消防署で待機することになったが、午後一一頃には一部の消防職員が消防車で岬林道を警戒巡視した。また消防団員の方も、一部の者が同様に再燃の警戒のため各所属の屯所でそれぞれ待機し、望見による監視に努めた。右非番の消防職員や右以外の消防団員は、同夜は自宅待機となった。なお本件一次火災現場に近い住宅地には消防車のホースを設置したままにして再燃の危険に対処した。右警戒体制の結果、翌二四日午前六時五〇分頃アスレチック公園の山頂付近で発煙を発見し、直ちに消防職団員が現場に急行して消火した。
そして、同日午前九時一五分右災害対策本部を廃止したことは前記事案の概要2(三)記載のとおりであるが、右非番の消防職員や自宅待機していた消防団員の一部も同日午前八時三〇分過ぎから警戒体制に加わり、望見あるいは消防車等による林道巡回の方法により警戒巡視を行っていた。また被告市民生部市民生活課の職員五名も、同日九時頃から、災害対策本部の業務として、前日同本部が消防職団員等に支給した焚出しの弁当容器(プラスチック製)回収のため火鋏と弁当容器を入れるゴミ袋を持って本件一次火災現場の山林内に入っており、市有林の監視人も同時刻頃、右火災に罹災した市有林の見回りに赴いていた。
なお前記鎮火宣言時の最大風速は7.4メートル、実効湿度は74.23パーセントであり、右災害対策本部廃止時には後記のとおり風速は強まっていたものの実効湿度は79.74パーセントとなり、0.5ミリ(岩手県気象月報によると、釜石地方は同日二ミリ)の降雨があった。
(四) ところが、同日午前九時頃から本件火災現場で風速が強まり、同九時頃には前記出張所の観測結果で最大風速19.9メートル、同一〇時頃には同25.8メートルの突風が吹いて、同九時三〇分頃には市有林の一次火災焼き止まり線の別紙図面のB地点付近に存した地中火が発煙し、これをいち早く発見した被告会社の職員や先の市民生活課の職員らがその消火に努めたが、風速が強まるばかりでその発煙箇所が増えそれが発火して手に負えない状態となった。また同時刻頃、別紙図面C地点でも発煙が発見され、指令に基づいて消防署の消防車及び消防団の第六分団の消防ポンプが現場に急行してその発煙箇所を消火したが、B地点付近と同様に風速が強まって近くの松林付近から火炎が上がり、これが周囲の樹木に燃え広がって樹冠火となり、たちまち手が付けられない状態となって退避せざるを得ない状況となった。
このようにして、前記事案の概要2(四)記載のとおり同日午前一〇時頃に残火の再燃による本件二次火災が発生し、同一〇時一四分頃右火災が覚知されて(甲一四の1に右覚知した時間が同一〇時三五分と記載されているが、その正確性に疑問がある)、同一〇時五五分再び災害警戒本部が設置され、同一一時〇六分再度全消防団に出動が命令され、同一一時三〇分災害警戒本部が災害対策本部に切替えられた。そして、同一一時四五分再度自衛隊に災害派遣を要請し、大槌町、遠野市にも応援出動を要請したが、強風は翌二五日未明まで続いた(その間の最大風速は、二四日午後零時頃の28.9メートル)ことから、空中消火作業を含む本格的な本件二次火災の消火作業は同日午前四時四〇分頃からしか開始できず、同日午後五時頃ようやく鎮圧状態となった。
(五) 被告市消防職団員は、その後も特別体制をとって消防車等により本件火災現場を巡視し、残火が確認されればジェットシェーター等により注水消火するなど残火処理に努め、同日三〇日には消防職団員や被告市職員など一二〇名余りを動員して本件火災現場全山の状況確認と残火処理を行った上、同年五月一日災害対策本部を災害警戒本部に切替えたが、その後も本件火災現場の望見による監視や消防車等による巡視を断続的に行い、同月五日には木の根が燻っている残火を発見し消火するなどした。そして、同月六日午前九時一〇分鎮火を宣言し、災害警戒本部を廃止した。しかし、被告市消防職員は、その後も同月一二日まで右巡視を続け、同月一〇日には右同様の残火を発見消火しており、翌日には付近の入山調査と撒水を行った。
(六) なお被告市において、災害警戒本部の設置は、①気象警報(海上に対する濃霧警報、波浪警報及び風警報を除く)又は津波注意報が発せられたとき、②県内の地域に震度四以上の地震が発生し、若しくは長雨等による地面現象災害が多数発生するおそれがある場合において、総務部長が必要と認めたときとされており、(乙一)、また災害対策本部の設置は、①大規模な災害が発生するおそれがあり、災害予防及び災害応急対策の実施上必要があるとき、②災害が発生し、その規模及び範囲からして災害応急対策の実施上必要があるとき、とされている(乙七)。
2 被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員の故意若しくは重過失の有無
(一) 公権力の行使に当たる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、当裁判所も国家賠償法四条により失火責任法が適用されるものと解する(最高裁昭和五三年七月一七日第二小法廷判決・民集三二巻五号一〇〇〇頁参照)。したがって、被告市は、右被告らに故意がある場合は当然損害賠償責任を免れることはできないが、故意がない場合は同法の適用によって右被告らに重大な過失が認められない限り、原告らに対し損害賠償責任を負わないこととなる。
(二) ところで、本件二次火災が本件一次火災の残火の再燃によって発生したものであることは前記事案の概要2(四)記載のとおり当事者間に争いがなく、右再燃は、本件一次火災によって生じた地中火が強風ないし突風によって発煙、発火したものであること、右地中火は、地表火が鎮圧されても消火されずに強風ないし突風によって容易に発煙、発火し、再燃の原因となり得ること、したがって、地中火が完全に消火されない限り再燃の危険が存すること、しかし地中火を完全に消火するためにはかなりの期間を要することは前項(三)以下認定の事実に照らして明らかである。
(三) そして、新聞記事等においては、被告市災害対策本部が本件一次火災につき昭和六二年四月二三日午後五時五〇分に未だ鎮火と認められる状態に至っていなかったにもかかわらず鎮火宣言をしたことなどを取り上げて、右のような措置をとった被告市災害対策本部の判断の甘さや、再燃に対する監視消火体制の不十分さを指摘しており、また後記認定の昭和五一年の山林火災の経験が生かされていないといった原告らの主張に沿うかのような批判を行っている(甲九の5、6、8、10、四三の1、2、証人宮原正利)。
そこで、以下被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員の故意若しくは重過失の有無について検討する。
(四) 証拠(甲九の8、10、一一の1、2、一二、二七、証人宮原正利、同佐藤健次郎、弁論の全趣旨)によれば、被告濱川が被告市の市長として在職していた昭和五一年一月二日に市街地で建物火災が発生し、折からの強風により延焼して山林火災となり同月四日ようやくこれを鎮圧して鎮火宣言し、同月六日に消防団員ら四三〇名ほどで出初め式を行ったが、翌七日に山林火災が再燃してその鎮火まで数日を要したということがあったこと、また岩手県内は山林火災が少なくないところ、山林火災の特徴の一つとして地中火の存することが指摘され、山林火災の消火ないし消防活動として、右地中火による再燃を警戒しその消火に努めることが肝要とされていたこと、ただ右地中火の存在は発煙発火しないと発見し難いことからその消火は容易ではなく、かなりの期間警戒を要することが消防関係者の間では本件火災当時においても周知のこととされていたことが認められ、右事実に前記1(三)以下認定の事実を照らし合わせると、被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員は、地中火という残火による再燃火災が発生する危険があることを十分認識していたと認めることができる。
しかしながら、証拠(乙一二、一三の1、2、一四、証人古川鶴松)によれば、被告市災害対策本部の本部長をしていた被告濱川らは、昭和六二年四月二三日の午後四時一五分頃には本件一次火災が鎮圧されたものと認められる状態になった上、風速も弱まって最大風速が八メートル前後となり、実効湿度も七四パーセント台となったことから、なお引き続き残火処理を行い警戒体制を維持することは必要であるものの、再燃による二次火災発生の可能性は極めて少なくなったものと判断し、本件火災が市街地に近く住民の不安が高まってきていたことから、速やかにその不安を除去し民心の安定を図る必要も考慮して、同日午後五時五〇分未だ鎮火状態にまで至っていなかったものの鎮火宣言をなしたものであり(右鎮火宣言時は、前記1(三)認定のとおり最大風速7.4メートルで実効湿度は74.23パーセントであった)、また右以降さらに風速が弱まり最大風速が二ないし六メートル程度となり、翌二四日午前九時頃には0.5ミリ程度の降雨があったことから、その頃から風速が強まってきてはいたものの、再燃による二次火災発生の可能性はなくなったと判断し、同日午前九時一五分被告市の災害対策本部を廃止したものであることが認められ、右事実に照らすと、被告濱川や被告市消防職団員において、未必的にせよ地中火という残火により本件のような大規模な山林火災が発生し原告ら所有山林等が罹災する事態(結果)まで認識認容していたとまでは到底認めることができない。そして、他に被告らに故意があることを認めるに足りる確たる証拠はない。なお、原告らは、被告濱川が本件火災当時たまたま直前の四月一九日に告示された被告市の市長選挙の真っ最中で自らも立候補していたため、当選したい一心で早々に選挙活動をなすことを欲し、未だ鎮火状態に至っていないのに鎮火宣言をして消火活動を打ち切ったと主張するが、本件一次火災発生に対応し災害対策本部が設置されて後、右市長選の各候補者が互いに選挙運動を自粛していたことが窺われる(証人阿部清美、弁論の全趣旨)し、地中火の再燃により本件のような二次火災を招いたのでは、選挙活動の上では却ってマイナス要因となると考えられるから、原告らの右主張を肯認することはできない。
そうすると、その余の点について判断するまでもなく、右被告らの故意行為を理由とする原告らの損害賠償請求は失当であるといわなければならない。
(五) そこで、次に重大な過失の有無について検討するに、右に重大な過失とは、通常要求される程度の注意すらしないでも、極めて容易に結果を予見できたにもかかわらず、これを漫然と見すごしたような場合を指すのであるから、結局はほとんど故意に等しいと評価されるべき著しい注意欠如の状態をいうものと解される(最高裁昭和三二年七月九日第三小法廷判決・民集一一巻七号一二〇三頁参照)。そして、本件では、消防職団員及び市長や助役兼消防長としてその消火活動等を総括しあるいはそれを補佐する立場にある者の過失が問われているのであるから、火災の予防、鎮火などを職務としこれに関する知識と技能を習得している者に求められる高度の注意義務を基準として、注意の著しい欠如があるかどうかを判断すべきである。
以上の見地に立って検討するに、山林火災の場合の地中火という残火による再燃火災が発生する危険があることは前記2(二)説示のとおりであって、被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員においても、そのことを十分認識していたと認められることは前記2(四)認定のとおりである。そして、証拠(甲一二、二四の1ないし22、二五の1ないし22、二七、三六、四一、四二、証人宮原正利、弁論の全趣旨)によれば、四月、五月は気象的に山火事前線という言葉があるほど山火事の頻発しやすい時期で、県内の主な火災例を見ても右期間の山林火災が多いこと、昭和六二年四月一二日から連日県下全般に火災気象通報である強風あるいは異常乾燥注意報が出されており、盛岡気象台の同月二二日午後九時五〇分発表の予報では、強風注意報は解除されているが異常乾燥注意報は継続して出されており、同気象台同月二三日午後八時四〇分発表の予報では、右二つの注意報が出され、翌二四日早朝から西よりの風が強まり、突風の吹くおそれもあるとされていたこと、本件火災現場はもともと海に突き出た半島部で地形的に突風が起こりやすい地域であったこと、山林火災は強風ないし突風による飛び火や樹冠火によって火の回りが早いところ、本件火災現場は、傾斜地や急傾斜地が多く、道路があっても道幅が挟く通行できなかったり、消火用水の確保が困難なため、消防車等の車輛を用いた機動的な消火活動が困難な地域であったことが認められ、これらの事実を合わせると、右二三日の気象台の予報があった時点はもとより、鎮火宣言時においても、右被告ら及び右消防職団員は、本件一次火災の残火である地中火の再燃により二次火災が発生し、本件のような大規模な山林火災となって原告ら所有山林等まで罹災する結果を予見することは全く不可能ではなかったというべきであって、火災から住民の生命、身体及び財産を保護することをもってその職務とする(消防組織法一条、消防法一条参照)右被告ら及び右消防職団員において、右結果を予見すべきであり、右結果発生を回避するために必要な措置を講ずべき注意義務があったものといわなければならない。
しかるところ、被告濱川、被告佐久山及び被告市消防職団員は、地中火により再燃火災が発生する危険があることを十分認識していながら、当時の気象状況等からその再燃による二次火災発生の可能性は極めて少ないものと軽信し、被告濱川を本部長、被告佐久山を副本部長とする被告市災害対策本部において四月二三日午後五時五〇分未だ鎮火状態にまで至っていなかったにもかかわらず鎮火宣言をし、さらに翌二四日午前九時一五分災害対策本部を廃止したことは前記(四)認定のとおりである。
しかしながら、被告市災害対策本部において鎮火宣言等をしたのは、前記認定のとおり消火活動の成果、気象条件その他を総合的に判断した結果であり、右被告ら及び被告市消防職団員は、前記1(三)認定のとおり、右鎮火宣言後も引き続き同日午後八時頃まで被告市消防職団員によって残火処理を行い、目視できる範囲の発煙箇所の消火を行った上、さらにそれ以降は、発煙発火が発見されれば直ちに消火活動が出来るように一部消防職団員が消防署や屯所で待機し、望見あるいは消防車等による巡視を行い、火災現場に近い住宅地には消防車のホースを設置したままにして置くなど、再燃に対する警戒体制を敷いているのである。
しかるに、前記1(四)認定のとおり、翌二四日午前九時頃から急速に風が強まり、同九時三〇分頃市有林の本件一次火災焼き止まり線のB点付近で地中火が発煙し、これをいち早く発見した被告会社の職員や被告市の市民生活課の職員らが消火に当たったが風速が急に強まり、これが周囲の松林に燃え広がって手が付けられなくなるという不幸な結末を招いたものであって、これほどまで急速に山林火災が広がると予見できなくともやむを得ないといわねばならない。確かに、地中火の消火は容易でなく、またひとたび強風ないし突風が吹けばその再燃による二次火災発生の危険が極めて大きくなること既に説示のとおりであるから、右二三日も夜を徹して消防職団員を動員し残火処理に当たるべきであったといえなくもないが、被告市消防職団員は同月二二日午後三時五〇分に第三出動命令によって全員動員され、翌二三日午後八時頃まで消火活動等に当たってきたものであること前記1(一)認定のとおりであって、速かに休息をとらせる必要があったということができるし、前記1(四)認定の同日の鎮火宣言から消火活動を切り上げた同日午後八時頃までの気象状況からすると、再燃による二次火災発生の危険がその日も前日に続く徹夜で消火活動を継続しなければならないほどに差し迫ったものであったとは認め難く、また、地中火の存在は発煙発火しない限り発見が容易でないこと前記2(四)認定のとおりであるから、夜間ではなおさら発見が容易でないものと推測され、右徹夜による残火処理の成果はさほど期待できないものというべきである。しかも右のように地中火の存在の発見は容易でないし、本件一次火災により焼失したのが一三六ヘクタールという広範囲な山林であって(乙一四)、急峻な山地であったことからすると、前日から徹夜で消火作業に当たっていた消防職団員をさらに動員して夜を徹して残火処理に当たらせるようなことは二次災害の危険を危惧させるものである。なおまた原告らは、同月二四日の日出(甲六三の3によると、同月二三日の日出時刻が午前四時四六分なので、翌二四日の日出もその時刻頃となろう)頃から消防職団員を動員して残火処理に当たれば、本件二次火災発生頃までに残火処理を完了できたと主張するけれども、前日の午後八時頃まで残火処理に当たった消防職団員に対し、翌早朝の五時頃から再び残火処理をすることを求めるのはやや酷であるというべきであるし、本件一次火災の焼損面積は一三六ヘクタールと広大であり(乙一四)、消防用水の確保が困難な山間地であること、地中火の存在は発煙発火しないと容易でないことなどを考えると、その主張のように二四日の日出から消防職団員を動員して残火処理をしたとしても、本件二次火災の発生を回避できたかどうか極めて疑問であるといわねばならない。そして、前記1(四)以下認定の事実に照らすと、本件二次火災発生後、被告濱川及び被告佐久山が、被告市の市長あるいは助役兼消防長として災害対策本部長等の職務を通じて行った措置や被告市消防職団員の右火災に対する消火活動等について、特に不適切な点があったとは認められない。
以上検討したところによれば、被告濱川らや被告市消防職団員において、本件一次火災の残火である地中火の再燃により二次火災が発生し、本件のような大規模な山林火災となって原告ら所有山林等まで罹災する結果を予見できなかったことは本件二次火災発生の経過から見てやむを得なかったということができる上、被告濱川が災害対策本部長として、被告佐久山がその副本部長として、その指揮の下に被告市消防職団員が行った結果発生の回避措置である本件一次火災鎮火宣言後の消火活動及び警戒体制も、当時の状況に照らして必ずしも不適切なものではなく、被告濱川及び被告佐久間は、右消火活動及び警戒体制を予定し、前記二(四)認定の右鎮火宣言前後から災害対策本部廃止頃までの気象状況等を総合して、右鎮火宣言及び災害対策本部の廃止を行ったものであり、また、本件二次火災発生後に被告濱川及び被告佐久山が市長等として行った措置や被告市消防職団員の行った消火活動等にも特に結果発生の回避措置として不適切な点は認められないのであるから、それら鎮火宣言等や消火活動等の措置は、前記説示の専門職員に課せられる注意義務を基礎において判断しても、著しく注意を怠ったもので、ほとんど故意に等しいものは判断し難く、過失は認め得るとしても、それが重大な過失の程度に達しているとは到底認めることができない。
そうすると、原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
三 よって、原告らの本訴請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官佐々木寅男 裁判官鈴木桂子 裁判官福士利博)
a 第二次火災罹災山林育成予想利益
面積(ha)
S62
当時の
樹齢
樹齢
7年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
14年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
21年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
28年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
35年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
0.90
14
21
30.24
108,864
28
44.28
159,408
35
55.62
600,696
42
65.52
707,616
49
374.4
4,043,520
1.95
16
23
74.49
268,164
30
103.74
1,120,392
37
125.97
1,360,476
44
147.42
1,592,136
51
836.55
12,046,320
0.14
17
24
5.556
20,001
31
7.7
83,160
38
9.324
100,699
45
10.808
116,726
52
60.9
876,960
1.57
18
25
66.882
240,775
32
88.862
959,710
39
106.76
1,153,008
46
123.716
1,336,133
53
693.94
9,992,736
2.93
19
26
131.264
472,550
33
171.112
1,848,010
40
203.928
2,202,422
47
235.572
2,544,178
54
1,315.57
18,944,208
0.57
20
27
26.904
96,854
34
34.314
370,591
41
40.584
438,307
48
46.626
503,561
55
258.78
3,726,432
0.43
21
28
21.156
76,162
35
26.574
286,999
42
31.304
338,083
49
35,776
386,381
56
197.8
2,848,320
0.12
22
29
6.144
22,118
36
7.608
82,166
43
8.928
96,422
50
10.608
152,755
57
55.92
805,250
1.26
24
31
69.144
746,755
38
83.916
906,293
45
97.272
1,050,538
52
109.622
1,578,557
59
602.28
8,672,830
1.05
26
33
61.32
662,256
40
73.08
789,264
47
84.42
911,736
54
94.29
1,357,776
61
521.4
9,223,200
1.80
33
40
125.28
1,353,024
47
144.72
1,562,9
54
161.64
2,327,616
61
175.68
3,162,240
68
918
16,524,000
0.58
35
42
60.424
652,579
49
69.056
745,805
56
76.36
1,099,584
63
82.236
1,480,248
70
426.62
7,679,160
0.36
38
45
27.792
300,154
52
31.32
451,008
59
34.416
495,590
66
36.432
655,776
73
187.2
3,369,600
1.01
40
47
81.204
877,003
54
90.698
1,306,051
61
98.576
1,774,368
68
103,02
1,854,360
75
529.24
9,526,320
0.83
45
52
72.27
1,040,688
59
79.348
1,142,611
66
83.996
1,511,928
73
86.32
1,553,760
80
443.22
9,750.840
1.05
47
54
94.29
1,357,776
61
101.22
1,821,960
68
107.1
1,927,800
75
110.04
1,980,720
82
564.9
12,427,800
0.53
48
55
52.604
757,498
62
57.072
1,027,296
69
59.392
1,069,056
76
61.016
1,098,288
83
313.2
6,890,400
1.86
50
57
165.912
2,389,133
64
186.0
3,348,000
71
191.952
3,455,136
78
197.16
3,548,880
85
1,030.44
22,669,680
2.27
55
62
223.37
4,020,660
69
232.45
4,184,100
76
238.80
4,298,400
83
245.16
5,393,520
90
1,257.6
27,667,200
7.3
58
65
735.84
13,245,120
72
756.28
13,613,040
79
776.72
13,980,960
86
797.16
17,537,520
93
4,088
89,936,000
1.20
59
66
121.44
2,185,920
73
124.80
2,246,400
80
128.16
2,819,520
87
131.52
2,893,440
94
674.4
14,836,800
3.03
60
67
307.85
5,541,300
74
316.33
5,693,940
81
324.82
7,146,040
88
333.3
7,332,600
95
1,708.9
37,595,800
2.43
63
70
249.80
4,496,400
77
256.61
4,618,980
84
263.41
5,795,020
91
270.22
5,944,840
98
1,385.1
30,472,200
2.65
65
72
274.54
4,941,720
79
281.96
5,075,280
86
289.38
6,366,360
93
296,80
6,529,600
100
1,521.1
33,464,200
合計
45,873,474
53,443,440
62,319,765
71,241,611
393,989,776
中間利息差引現価
33,980,351
31,437,317
30,399,885
29,684,005
143,269,008
総合計
268,770,566円
b
面積(ha)
S62
当時の
樹齢
樹齢
7年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
14年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
21年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
28年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
35年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
0.88
19
26
39.42
141,912
33
51.39
555,012
40
61.25
661,500
47
70.75
764,100
54
395.10
5,689,440
0.13
22
29
6.66
23,976
36
8.24
88,992
43
9.67
104,436
50
10.97
157,968
57
60.60
872,640
0.23
26
33
13.43
145,044
40
16.01
172,908
47
18.49
199,692
54
20.65
297,360
61
112.25
2,020,500
1.56
45
52
135.72
1,954,368
59
149.14
2,147,616
66
157.87
2,841,660
73
162.24
2,920,320
80
833.05
18,327,100
0.61
50
57
56.85
818,640
64
61.00
1,098,000
71
62.95
1,133,100
78
64.66
1,163,880
85
331.85
7,300,700
1.1
60
67
111.76
2,011,680
74
114.84
2,067,120
81
117.92
2,594,240
88
121.00
2,662,000
95
624.00
13,728,000
1.73
65
72
179.23
3,226,140
79
184.07
3,313,260
86
188.92
4,156,240
93
193.76
4,262,720
100
993.00
21,846,000
合計
8,321,760
9,442,908
11,690,868
12,228,348
69,784,380
中間利息差引現価
6,164,267
5,554,652
5,702,862
5,095,145
25,376,138
総合計
47,893,064円
c
面積(ha)
S62
当時の
樹齢
樹齢
7年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
14年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
21年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
28年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
35年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
4.45
11
18
25
189.57
682,452
32
251.87
2,720,196
39
302.60
3,268,080
46
1753.3
18,935,640
3.75
12
19
26
168.00
604,800
33
219.00
2,365,200
40
261.00
2,818,800
47
1507.5
16,281,000
3.67
14
21
123.31
443,916
28
180.50
649,800
35
226.81
2,449,548
42
267.18
2,885,544
49
1526.7
16,488,360
2.36
17
24
95.34
343,224
31
129.80
1,401,840
38
157.18
1,697,544
45
182.19
1,967,652
52
1026.6
14,783,040
0.46
40
47
36.984
399.427
54
41.308
594,835
61
44.896
808,128
68
46.92
844,560
75
241.04
4,338,720
0.79
45
52
68.73
989,712
59
75.524
1,087,546
66
79.948
1,439,064
73
82.16
1,478,880
80
421.86
9,280,920
合計
2,176,279
5,021,273
11,479,680
13,263,516
80,107,680
中間利息差引現価
1,612,059
2,953,690
5,599,844
5,526,465
29,130,065
総合計
44,822,123円
d
面積(ha)
S62
当時の
樹齢
樹齢
7年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
14年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
21年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
28年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
35年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
1.01
5
12
19
26
45.248
162,893
30
58.984
637,027
40
70.296
759,197
3.35
12
19
16
150.08
540,288
33
195.64
2,112,912
40
233.16
2,518,128
47
269.34
2,908,872
合計
540,288
2,275,805
3,155,155
3,668,069
中間利息差引現価
317,816
1,030,689
1,314,648
1,333,843
総合計
3,996,996円
e
面積(ha)
S62
当時の
樹齢
樹齢
7年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
14年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
21年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
28年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
樹齢
35年後の
伐採量
(立方)
伐木の
価額
0.62
6
13
20
19.22
69,192
27
29.264
105,350
34
37.324
403,099
41
44.144
476,755
1.1
10
17
24
44.44
159,984
31
60.5
653,400
38
73.26
791,208
45
84.92
917,136
12.24
11
18
25
521.424
1,877,126
32
692.784
7,482,067
39
832.32
8,989,056
46
964.515
10,416,730
3.77
12
19
26
168.896
608,026
33
220.168
2,377,814
40
262.392
2,833,834
47
303.108
3,273,556
合計
2,714,328
10,618,631
13,017,197
15,084,187
中間利息差引現価
1,596,664
5,179,820
5,423,832
5,485,158
総合計
17,685,474円
持分割合表
合資会社a
33,980,351
31,437,317
30,399,885
29,684,005
143,269,008
0.2e
0
319,332
1,035,964
1,084,766
1,097,031
年度別計
33,980,351
31,756,649
31,435,849
30,768,771
144,366,039
合資会社計
272,307,659円
勝弘b
6,164,267
5,554,652
5,702,862
5,095,145
25,376,138
0.3d
0
95,344
309,206
394,394
400,152
年度別計
6,164,267
5,649,996
6,012,068
5,489,539
25,776,290
勝弘計
49,092,160円
紳一郎c
1,612,059
2,953,690
5,599,844
5,526,465
29,130,065
0.7d
0
222,471
721,482
920,253
933,690
0.8e
0
1,277,331
4,143,856
4,339,065
4,388,126
年度別計
1,612,059
4,453,492
10,465,182
10,785,783
34,451,881
紳一郎計
61,768,093円
別表 原告会社罹災物品一覧表
罹災物品名
価額
チェンソ①
78,000
枝打機5台
425,000
下刈機1台
80,000
工具一式
100,000
はしご2
16,000
ワイヤーロープ
130,000
オートバイ
63,000
台所用具
30,000
ザック10
10,000
消防器具
307,000
スキー3台
60,000
スコップ3
15,000
ツルハシ2
10,000
カッチャ2
10,000
トンガ3
15,000
枝打鎌5
40,000
〃斧2
20,000
ランプ5
140,000
食器類
60,000
大工道具一式
100,000
混合オイル16缶
16,000
グリス400㌘×14
10,000
枝打ノコギリ3
30,000
集材機用滑車15
120,000
チェンソー部品
20,000
下刈機部品
20,000
枝打機部品
20,000
オートバイ
100,000
計
2,045,000
臼杵
28,000
網戸
50,000
測量コンパス
60,000
測量巻尺
5,000
測量ポール(3)
3,000
製図板
50,000
輪尺(2)
26,000
釣り竿(3)
70,000
一輪車
10,000
水道工事用具
10,000
水道工事部品
10,000
桶(大・中・小)
20,000
下刈鎌(5)
25,000
波トタン6尺×5
5,000
平トタン6尺×2
2,000
電気コードリール(3)
15,000
シート2
6,000
植苗用ドリル
20,000
動力噴霧機
15,000
枝打用ハシゴ
15,000
足踏ミシン
10,000
ガス釜
10,000
除草剤
5,000
セッコボード(5)
5,000
マキストーブ
50,000
水力発電用ホース
300,000
プラニメーター
50,000
計
875,000
和箪笥
450,000
整理箪笥
35,000
茶箪笥
60,000
衣裳函(4)
12,000
ストーブ
36,000
ヒーター
15,000
座卓(3)
17,500
食卓、椅子(6)
80,000
サイドボード
20,000
応接セット(手製)
10,000
スタンド、照明器具
65,000
置時計
7,000
トランジスターラジオ
12,000
襖(6)
42,000
障子(4)
18,000
ガラス戸(12、6)
99,000
ガラス窓
35,000
網戸(6、4)
36,000
雨戸(8)
28,000
敷茣蓙(6畳1、1、2)
10,000
掛軸(2)
920,000
ランプ(6)
47,500
畳(12)
72,000
座布団(14)
56,000
座椅子(10)
70,000
電灯配線
250,000
水道設備
180,000
鉈
6,500
計
2,689,500
事務机
25,000
事務椅子
12,000
会議用テーブル
25,000
会議用椅子
20,000
黒板
8,000
流し台
20,000
盛付け台
8,000
障子戸
12,000
座卓
7,500
トランシーバー
80,000
お茶道具一式
25,000
火鉢
20,000
敷布団(4)
60,000
毛布(10)
60,000
布団(4)
60,000
コタツ布団(1)
20,000
蚊帳
18,000
整理タンス
35,000
ポット(1)
5,000
事務用品一式
30,000
計
550,500
グラス(15)
9,000
酒盃(8)
8,000
猪口(20)
10,000
急須(2)
6,000
盆(7)
22,000
ナイフ大(10)
12,000
〃中(10)
3,800
フォーク大(10)
5,300
〃中(10)
3,600
スプーン大(10)
5,400
〃中(20)
7,200
箸上,普(70)
31,600
徳利(12)
12,000
銚子袴大,中(10)
14,000
菓子器(2)
6,000
盛皿(5)
10,000
ジャーポット
10,300
日本酒、ウイスキー
12,000
〔家事用品〕
風呂用具一式
155,000
洗面所一式
80,000
大工道具
25,000
便所一式
72,000
計
520,200
カーテン(1,4)
57,600
物品台(2)
16,000
レンジ
26,000
流し台、調理台
72,000
ガステーブル
10,000
ガス湯沸器
17,000
鍋、釜(7,2)
26,000
ヤカン(大,中)
7,000
食器戸棚
16,000
調理用具
12,500
和洋食器
べ一クライト皿(12)
9,600
皿特大(10)
30,000
〃大(20)
50,000
〃中(20)
12,000
〃小(40)
12,000
茶碗(15)
10,500
汁碗(15)
30,000
丼大フタ付(10)
19,000
〃中(10)
13,000
〃小(20)
14,000
湯呑(30)
18,000
茶托(10)
9,000
菓子皿(20)
20,000
紅茶セット(2)
40,000
カップ(20)
15,000
ジョッキ(16)
13,600
計
575,800
〔寝具類〕
マットレス(8)
144,000
敷布団(12)
240,000
毛布(18)
126,000
掛布団(12)
240,000
肌掛布団(12)
84,000
枕(8)
16,000
シーツ(12)
36,000
カバー(布団)(10)
30,000
〃(肌掛)(10)
25,000
〃(毛布)(10)
22,000
丹前ウール(8)
160,000
羽織〃(8)
120,000
浴衣(12)
144,000
帯(8)
16,000
パジャマ(6)
60,000
蚊帳
25,000
長靴(2)
9,200
ゴム長靴(4)
10,000
作業衣(上下)(2,4)
23,000
Yシャツ(2)
4,000
ズボン(5)
27,500
セーター、チョッキ(3,2)
21,000
ジャンパー(3)
42,000
下着類(6,8)
22,800
靴下、マフラー
5,500
帽子(2,3)
9,000
計
1,662,000
レインコート(2)
12,000
手袋(5)
3,000
雨傘(3)
6,000
カバン(1)
8,500
リュックサック(1)
13,000
計
42,500
総計 8,960,500
別表
原告会社木材一覧表
罹災物品名
価額
杉林
10尺×4寸×4寸
4000
13尺×1.2寸×1.2寸
320
13尺×3.0寸×3.0寸
2,010
13尺×1.5寸×3.6寸
28,500
15尺×6寸×4寸
18,200
18尺×1寸×5寸
45,000
13尺×1.2寸×0.6寸
170
13尺×0.6寸×0.6寸
150
13尺×7.0寸×0.6寸
1,108
13尺×5.0寸×0.6寸
790
13尺×3.5寸×3.5寸
4,040
13尺×3.5寸×2.0寸
1,850
13尺×4.0寸×2.0寸
2,640
欅
13尺×7.0寸×7.0寸
32,340
桜
13尺×4.0寸×2.0寸
8,500
栗
13尺×4.0寸×4.0寸
7,420
松
13尺×4.0寸×2.0寸
1,795
〃
13尺×3.0寸×0.6寸
410
〃
24尺×1.5寸×5.0寸
3,960
〃
18尺×1.0寸×4.0寸
2,880
檜
13尺×2.0寸×1.5寸
19,800
〃
13尺×3.0寸×2.0寸
3,960
杉、足場丸太
1,630
計
191,473
別表
原告渡邉罹災物品一覧表
罹災物品名
価格
和ダンス
20,000
洋服ダンス
20,000
〃
20,000
〃
20,000
〃
20,000
カップボード
70,000
本箱
40,000
コタツ
20,000
座卓
30,000
時計(柱)2
20,000
めざまし
3,000
〃
3,000
腕時計
17,000
〃
15,000
ステレオ
120,000
じゅうたん
20,000
〃
20,000
〃
30,000
ベッド
30,000
〃
30,000
冷蔵庫(旧)
3,000
電気冷蔵庫
20,000
流し台・調理台
32,000
ガステーブル
15,000
食器戸棚
90,000
〃
60,000
食器
380,000
調理用具
30,000
計
1,198,000
ポット
4,800
〃
5,500
電気洗濯機
35,000
電気掃除機
18,000
充電式掃除機
12,800
風呂用具一式
15,000
ミシン2
70,000
アイロン
12,000
カメラ
30,000
〃
3,000
〃
25,000
レコード
120,000
マットレス(5)
75,000
敷布団10枚
180,000
掛布団10枚
180,000
毛布10枚
60,000
夏掛け5枚
35,000
タオルケット8枚
56,000
寝具類小物
50,000
野球ミット・ボール
15,000
サッカーボール
6,500
ゲートボール
5,000
バトミントン
1,500
自転車(4)
10,000
スキー用具(3)
60,000
バレーボール
4,500
ラグビーボール
5,000
計
1,094,600
オーバー
60,000
背広上下2組
120,000
普段着上下夏冬
60,000
作業着上下夏冬
35,000
下着、靴下類
25,000
オーバーコート
60,000
レインコート
25,000
ワンピース
35,000
スカート、スラックス
80,000
普段着上下夏冬
70,000
作業着上下夏冬
40,000
下着、靴下類
30,000
オーバー
40,000
普段着上下夏冬
60,000
外出用上下夏冬
80,000
学校用トレーニングウェア
16,000
下着、靴下類
25,000
オーバー
40,000
普段着上下夏冬
55,000
外出用上下夏冬
80,000
学校用トレーニングウェア
16,000
下着、靴下類
25,000
靴、傘
120,000
学用品
150,000
玩具類、ぬいぐるみ
70,000
手芸用品一式
60,000
手芸用布、毛糸
100,000
手芸用机
70,000
計
1,647,000
勉強机、椅子
95,000
電気スタンド
8,000
カセット
16,000
本棚
28,000
ボックス
15,000
ロッキングチェアー
45,000
藤の三段タンス
38,000
鉢物
9,000
照明器具
20,000
ひご、花瓶
15,000
鯉のぼり
35,000
ポリ容器
10,000
果実酒類
20,000
酒類
25,000
本(1,500冊)
1,000,000
計
1,379,000
総計 5,318,600
別表山林土地の焼損一覧表
<省略>
別紙図面<省略>